「相続税の制度」に関するお役立ち情報
生前贈与の失敗事例
1 相続税対策による生前贈与
将来、子どもたちが遺産相続をする際に多額の相続税がかからないように対策しておきたいとお考えの方も多いかと思います。
相続税対策の1つとして生前贈与がありますが、場合によっては相続税を減らすことができないこともありますので、実際に行う際は注意が必要です。
どのような場合だと減らすことができないのか、以下では、生前贈与の失敗事例についてご紹介します。
2 子ども名義の口座にお金を入れただけの場合
例えば、父Aさんが、長男Bさん名義の口座に、毎年100万円を入金していたとします。
父Aさんは、生前贈与をしておけば、遺産総額を減らし、相続税を軽くすることができると考えていました。
しかし、父Aさんは、長男Bと贈与契約を結ぶことなく、毎年決まった日に、長男Bさんの口座に入金をしていました。
「長男B名義の口座にお金を入れた以上、贈与は成立している」という考えからだと思いますが、これでは贈与とは認められません。
贈与は、当事者双方の合意が必要になります。
そのため、贈与の度に、父Aさんと長男Bさんで、贈与契約をする必要があるのです。
3 贈与契約はしたものの通帳の管理を親がしていた場合
先程の例で、父Aさんと長男Bさんが、毎年しっかり贈与契約をしていたとします。
しかし、父Aさんが、長男Bさんの通帳や印鑑を管理しており、長男Bさんは、その口座のお金を1回も使ったことがない場合はどうでしょうか。
こういったケースでは、税務署は「実際は贈与していないのではないか」という判断をする可能性がありますので、注意が必要です。
4 一括の贈与とみなされてしまう場合
父Aさんが、110万円までであれば、贈与税が課せられないという点に着目し、長男Bさんに10年かけて1100万円を贈与したとします。
こういったケースでは、税務署は、「毎年110万年を贈与したのではなく、最初から1100万円を贈与する意図があったのではないか」と考えることがあります。
年110万円×10年の暦年贈与ではなく、一括で1100万円の贈与とされてしまうと、多額の贈与税が課せられることとなってしまいます。
5 一部の相続人にのみ生前贈与をして遺言を残していなかった場合
父Aさんは、長男Bさんに対してのみ、合計1000万円の贈与をしていました。
父Aさんが亡くなった際、相続人は長男Bさんと二男Cさんだけだという場合、二男Cさんからすれば、「遺産の分け方を決めるにあたって、生前贈与は考慮すべき」と主張したくなるかと思います。
その結果、相続人である長男Bさんと二男Cさんが揉めてしまい、兄弟仲が悪化したり、その後の関係の修復が難しくなったりしてしまうかもしれません。
そのようなことを防ぐためにも、生前贈与をする際は、その後の相続のことも念頭において進める必要があります。
また、相続税対策には、生前贈与の他にも様々な方法がありますが、それぞれに注意すべき点があります。
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