「相続税の制度」に関するお役立ち情報
相続人以外が遺産を受け取った場合の相続税
1 相続人以外に遺産を渡すことは可能
相続に関するよくある誤解として、「遺産を取得できるのは、相続人である家族や親族だけだ」というものが挙げられます。
しかし、法律上、相続人ではない人が遺産を取得することが禁止されているわけではありません。
家族関係・人間関係は、家庭ごとに事情が異なるため、遺産の渡し方は柔軟に決めていいものとされています。
例えば家業を営んでおり、ご自分が亡くなった後は子ではなく孫に事業を継いでほしい場合、子ではなく孫に遺産を相続させたいとお考えになるケースもあるかと思います。
その場合、家業を継ぐ上で必要な資金はもちろん、家業を行う上で必要な機械や不動産、会社の株式などを、孫に相続させることが考えられます。
また、お世話になった友人や、介護を頑張ってくれた長男の妻に遺産を渡したいというケースも珍しくありません。
相続人ではない方に財産を遺したい場合、その旨を記した遺言書を作成しておけば、その内容に従って遺産を渡すことができます。
2 相続人以外の人が遺産をもらう場合の相続税
相続税は、その文言から、相続人にだけ関係する税金だと思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、遺産を取得した場合は、相続人でなくとも、相続税を納めなければならないことがあります。
遺産総額が一定の額以下であれば、相続税は課せられません。
遺産総額が一定の額を超えて相続税の申告が必要な場合には、遺産を受け取った人に相続税が課せられることとなります。
これは、相続人ではない場合でも同様で、相続税の申告をして納税する必要があります。
例えば、遺産が1億円あって、相続人が長男と二男というケースを考えます。
遺言書で、「長男に3000万円、二男に3000万円を相続させ、家業を継ぐ孫に4000万円を遺贈する」と決められており、そのとおりに遺産を取得した場合、長男と二男はもちろん、本来相続人ではない孫も相続税の申告をした上で、相続税を納付しなければなりません。
3 相続人以外の人が遺産を受け取った場合の相続税の計算
例えば、相続人が長男・二男・三男の3名の場合について考えてみます。
相続税には、基礎控除というものがあります。
相続税の基礎控除では、まず、3000万円以下の遺産には相続税が課せられません。
さらに、相続人1人につき600万円までの遺産には、税金が課せられないこととなっています。
そのため、相続人が長男・二男・三男の3名の場合、3000万円に加え、税金が課せられない範囲が、600万円×3名で1800万円増えて、遺産総額が4800万円までなら相続税が課せられないことになります。
他方、長男・二男・三男の3人に加えて、それぞれの子、つまり亡くなった人から見た孫3人にも遺産を渡す場合、相続税が課されない範囲(基礎控除額)は増えるのでしょうか。
もし、遺産を渡す人数分だけ基礎控除額が増えるとすると、このケースでは、長男・次男・三男の3人と、それぞれの子3人の、計6名に遺産を渡すことになります。
そのため、基礎控除額は6600万円となり、この金額までは非課税であるとお考えになる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、この計算は間違いです。
相続人が3名である以上、相続人の他に何人遺産を貰う人がいたとしても、税金が課せられない範囲(基礎控除額)は変わりません。
したがって、3人の孫に遺産を渡す場合でも、3000万円+600万円×3名で4800万円が基礎控除額ということになります。
また、相続人以外の人が遺産を受け取った場合、相続税が2割加算されることになっています。
そのため、相続人以外に遺産を渡す場合は、相続税が増えてしまう可能性を考慮することが必要です。